気管支ぜんそく(アレルギー性肉芽腫性血管炎)


気管支ぜんそく

この病気は昔から知られているアレルギー疾患の一つで、かつてはアトピー性皮膚炎同様に、中高生くらいになれば自然と治癒してしまうことが多かったのですが、最近では幼児期から継続し、大人になってから突然発症する例も増えてきています。ぜんそくとは「喘鳴を伴う発作性の呼吸困難」を起こす病気のことを言い、この喘鳴とはゼーゼー・ヒューヒュー・という気管支から生じる音で、細くなった気管支を空気が通るときに音が生じます。ぜんそくが強いときには、聴診器を使わなくても聴こえるほどです。

坂道や階段の上り下りなどの労作時に呼吸困難が生じる心臓性ぜんそくや肺気腫などとは違い、気道が狭くなっているために呼吸困難が生じるもので、労作によらないことが特徴とされています。以前までは気管支ぜんそくは、気管支の収縮によって気道が狭くなると考えられていましたが、現在ではそれに気道の炎症が加わると考えられるようになりました。そのため、ぜんそくは今、気道の慢性炎症性疾患として考えられています。また、喘息があってもその全てがぜんそくと言う事ではなく、慢性気管支炎・肺気腫・肺門部のリンパ節腫瘍・気管支の異物や心不全なども同様な症状を起こすこともあるので注意が必要です。


症状

ぜんそくの症状としましては、喘息と呼吸困難が主な症状でぜんそくはゼーゼー・ヒューヒュー・という音であり、呼吸困難は息を吐くときのほうが苦しくなります。呼吸困難が強くなると、横になることができず、座って前かがみの姿勢をとり、起座呼吸となります。こちらの呼吸困難発作はつかえていたタンが出て空気が自由に気道を出入りできるようになれば改善されます。

【 咳と痰(たん)
痰を伴わず「空せき」が主な人もいますが、発作の終わり頃に、咳とともに痰が出て楽になるという人も大勢います。痰は通常は薄く、透明でなかなか吐き出せず喉に絡まる感じが強いものです。細菌感染していると、黄緑色の膿のような痰となります。

【 発熱・チアノーゼ
ぜんそく発作だけでは通常、発熱はしません。 発熱をした時は、感冒や気管支炎などの呼吸器感染症を併発している可能性があります。チアノーゼ(唇や指の爪が紫色になる)が出るようでは重篤な発作の兆候なので注意が必要です。

【 ぜんそくのしくみ 】
ぜんそくはアトピー型・非アトピー型に分類されています。


アトピー型ぜんそく
遺伝性の作用が強く働く病気で、アレルギー性ぜんそくとも呼ばれています。本人の既住や家族歴にアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎などのアトピー性疾患が見られることが多く、皮膚反応や血液検査などで室内塵や花粉などの抗原に陽性を示すタイプの人をいいます。 非アトピー型ぜんそくは、気道感染によって発作が誘発されることが多く、発熱・膿性痰・咽頭部や扁桃の炎症などが見られることが多く皮膚反応では陰性で、多くは中年以降に発症します。日本ではアトピー型70%・非アトピー型30%位の比率と考えられています。アトピー型ぜんそくの発作の仕組みは、肥満細胞の表面でIgE抗体とアレルゲンは反応し、肥満細胞からヒスタミン・ロイコトリエン・などの化学伝達物質が放出されます。

この化学伝達物質は気管支の平滑筋を収縮させてけいれんを起こし、粘膜の浮腫み、気管支狭窄を起こします。また、分泌を亢進させる恐れもあり、鼻水や気管支粘液・痰を増やしてしまうので、これも気管支を狭くする一因と考えられます。 前述が即時型反応と呼ばれるもので、これによって起こる症状はアレルゲンを吸入して15〜30分後にピークになり、一時間くらいでおさまります。これで症状がおさまれば軽い発作で済みますが、ぜんそく患者の約半数は数時間後に再び、遅発型反応による発作が起こると言われています。 遅発型反応は、好酸球によっておこる気道平滑筋収縮と気道粘膜炎症です。好酸球は肥満細胞から放出された好酸球遊走因子や血小板活性因子、ヘルパーT細胞が作るサイトカインであるインターロイキン5などによって気管支に集められます。

また、肥満細胞から放出されたのと同じロイコトリエンなどの化学伝達物質を出し、これらの作用で平滑筋を収縮させ、粘膜に炎症を起こすものです。この炎症によって粘膜に浮腫みが生じ、平滑筋の収縮によって狭くなった気管支をますます狭くするため、ぜんそくの症状が悪化することになり、1〜2日は継続します。ぜんそくの患者さんはもともと気管支が過敏になっているため、この刺激によって過敏性がさらに亢進されます。そのためにさらに外界からの刺激に敏感になり、次の発作が起こりやすくなり慢性化へとつながっていくことになります。


非アトピー型
非アトピー型ぜんそくを起こす誘因となるものは、気道感染のほか、冷気・大気汚染物質・ストレス・などが考えられます 通常、発作を起こす経路は副交感神経によるものや肥満細胞を介したもの、リンパ球への直接作用によるものなど、いくつかの説が考えられています。この中で、冷気や大気汚染物質、ストレスなどは、気道上皮にある知覚受容体の一種である刺激受容体を刺激し、副交感神経を介してアセチルコリンという物質を放出させて、さらに神経ペプジトをも放出させて、気道を収縮させたり気道過敏性を亢進させると考えられています。


【 小児ぜんそく 】
小児ぜんそくは思春期終了までのぜんそくと考えられています。その定義については成人と同じように気道の炎症という考え方が適応され、小児ぜんそくの90%は1〜4歳で発症すると言われていますが、20年前の学童における調査では、大人のそれと大差なく1%前後だったのが、最近の調査では6%と増加してきています。その原因として考えられていることは、

アルミサッシによって密閉性を増した室内に暖房器具が普及し、高温多湿の室内環境が生じてカビ・ダニ・の数が増加した。

逆に夏は冷房によって、ダニが生育しにくい30℃以上の室温がなくなった。また、寝具がベットに変更され家庭が増えると共に、天日乾燥の機会が少なくなったため、布団中のダニの数が増加してきた。

仮性アレルゲン(ぜんそく発作の原因となる化学物質)を含む香味野菜、特殊加工食品が増加したなどが考えられます。

昨今、衛生環境の改善と抗生物質の適切な使用のために、感染パターンが変わりつつあり、その主流が細菌感染に移ってきて、感染死が減少したことによる平均寿命は延びたが、アレルギー性疾患の発生には、好条件な環境になってしまったとの説もあります。

花粉症は本来花粉の発生地に多いはずですが、都会地のほうが花粉の影響を受けていると言う現状があります。都市化による諸現象が、アレルギー症の発生に大きな影響を与えているのは事実であります。 現在の社会において都市部のエネルギー消費は大気汚染とそれに伴う室内汚染を生んでいます。さらには人口密集型の社会構成によって、緊迫した競合的な社会での人間関係や心理的ストレスなどを溜めてしまいがちです。小児期のぜんそくでは、学校での人間関係や、親子関係などが発作の発生に影響を与えていると言われています。また、小児ぜんそくのもうひとつの特徴としましては男児に多いことです。では、小児ぜんそくはいつごろ治るかというと、統計によっては多少の誤差はあるものの、その過半数は思春期前後には治ってしまいます。

小児ぜんそくの病状としましては、基本的には大人の場合と同様で、気管支平滑筋の収縮、気管支粘膜の浮腫み、また、分泌過剰による気管支腔の閉塞です。その原因として気道の炎症が考えられています。このような状態を引き起こす原因はアレルギー反応が中心ではありますが、それ以外では、ウィルス感染・タバコの煙・車の排気ガス・工場からの排煙・など、さまざまな要因が考えられます。また、精神的な心因も深く関わっているのでしょう。

主なぜんそくの症状としましては、咳・ぜんそく・呼吸困難が現れます。咳は乳児では痰を伴うことが多く、年長児では「空咳」が多いとされています。


【 運動誘発性ぜんそく 】
小児ぜんそくのもう一つの原因として、運動が何らかの影響を及ぼしてしまうことがあります。例えば、ぜんそくの子供が発作の起きていないときに、サッカーやマラソンなどの激しい運動を行った場合、その途中や終了した後に、一時的にぜんそく・息切れ・呼吸困難といった症状が出ることがあります。これらを運動誘発性ぜんそくと呼びます。一般に重度のぜんそく児にみられ、学校などで運動したときに発作を起こすケースが多いため、運動や行事などが制限されたりするので、学校生活をどのようにしたらいいかという問題も出てきます。

また、ぜんそくが出やすい運動とそうでない運動があることも知られています。発作が起きやすい運動としましては、ランニングやマラソンなどで、逆に水泳やスキーなどではほとんど発作が起きません。そのため、ぜんそくの子供が鍛錬の一環として運動する場合は、水泳などのスポーツをするのがいいでしょう。このぜんそくの予防としては、運動前にウォーミングアップを十分行うことで、いきなり走ったり、泳いだりせず、入念な準備運動を行うことによって、かなり運動誘発性ぜんそくが軽くなることがわかっています。